院長コラム

「落下の解剖学」

封切のフランスの映画。昨年のカンヌ国際映画祭で最高のパルムドールを獲得し、今年のアカデミー賞でも作品賞や主演女優賞にノミネートされている。ストーリーはシンプルで、ある雪山の山荘で男が死んだ。その男の妻に殺人容疑がかかり、唯一の証人は視覚障害のある11歳の息子だった というもの。果たして事故か、自殺か、殺人かを問う裁判劇。原題も同様だが、他の邦題にして欲しかったなあ。2h32は長かった。 評価 〇マイナス

「それでも私は生きていく」

2022年のフランス映画。シングルマザーの女性が老父の介護と新しい恋のはじまりという二つの局面の中で揺れ動くさまを静かに撮っている。元高名な哲学者だった父が体だけでなく認知症になっていく様を見て、娘の力だけではどうしようもなくなる状態は今の日本と同様だった。妻子ある旧友との恋も困難な状態で、結局題名のような感じにしかならなかった。評価 〇

「小さき麦の花」

2022年中国映画。地方の寒村を舞台に、名もなく貧しい夫婦の苦難の日常を綴ったドラマ。自然の脅威や時代の変革の波にさらされながらも、結婚したての二人が互いに寄り添って生きていく姿は、とても今の時代とは思えなかったが、このような人々もまだ多くいるのだろう。中国でも異例のヒットをしたようだが、それはなぜかな? 報われない人生というのは哀しい。 評価 〇プラス

「ナイアド ~その決意は海を越える~」

新作洋画。題名は主人公のダイアナ・ナイアドから来ている。実話に基づく話。マラソンスイマーを引退して30年。60歳になったダイアナが一度失敗したフロリダ海峡横断165Kmに再度チャレンジするストーリー。今度は3度の失敗を経て、2003年63歳の5度目で達成した。ほとんど事実なので、改めてその凄さに感動した。今年のオスカーでも主演女優賞(アネット・ベニング)と助演女優賞(ジョディ・フォスター)がノミネートされているのも納得。二人の女優に乾杯! 評価 〇プラス

「雑魚どもよ、大志を抱け!」

2023年の邦画。今注目されている脚本家&監督の足立 紳の作品。彼の自叙伝的な小説「弱虫日記」を自ら映画化した。昭和末期の地方(山梨?)の町を舞台に、小学6年生の7人の様々な悩みと成長をノスタルジックに綴ったほろ苦い青春ドラマ。無名の少年たちが40年前の時代に確かに生きていた! 評価 〇プラス

「夜明けまでバス停で」

2022年の邦画。題名のようにバス停のベンチに座って寝ている女性のポスターが目を引く。2020年に実際に起こったホームレス女性の殺人事件を題材にした社会ドラマ。コロナ禍で住まいも仕事も失った女性を主人公に、社会に埋もれている人々を静かに描いている。映画では一筋の光明があった。評価 〇プラス

「身代わり忠臣蔵」

新作邦画。皆が知っている赤穂浪士と吉良上野介の戦いの顛末を変えずに、フィクション化した喜劇。松の廊下で切られた吉良はそれが原因で死んでしまう。吉良家の存続のために、瓜二つの弟をその代役(身代わり)にする、、という発想がユニークだ。さらにその代役が大石内蔵助と吉原で知り合ったことから二人で筋書きをつくる、、、。コメディとしては成立しているが、演出がもたもたして爆笑にはならなかった。 評価 〇

「カラーパープル」

新作洋画。1985年の同名の映画を基に、舞台ミュージカル化。今回そのキャストを中心に映画化された。1907年のアメリカ南部を舞台に、10代で義父の命令で男と結婚した女性が主人公。ずっと貧しく虐げられてきたが、仲間の力を得て、一人の人間として成長していく様を感動的に綴ったストーリー。ラストは1947年で、40年に渡る半生を描いていた。評価 ◎

「夜明けのすべて」

新作邦画。二人の病を持つ若い男女が、ある職場で出会う。お互い最初は反発しあうが、職場の皆の暖かい態度に接して、それぞれ自分の気持ちを吐露させていくまでを描いている。静かな感動を呼ぶ佳作だ。多様性などの言葉が地についてしっかり根を張ることを見せてくれている。 評価 ◎

「マジック・マイク ラストダンス」

2023年のアメリカ映画。このシリーズの第3弾。男性ストリップダンスの世界を描いている。一度は足を洗った主人公のマイクだったが、アメリカの富豪の女性に誘われて、イギリスでの興行を助けることになる。ロンドンの歴史ある劇場で、今度はディレクターとしてその辣腕をふるう。全米ではヒットしたようだが、日本ではその土壌や文化が違いすぎで現実味がなかった。 評価 〇マイナス

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