院長コラム

「スープとイデオロギー」

2021年の日本映画。自伝的な劇映画「かぞくのくに」で高い評価をうけたヤン・ヨンヒ監督が、自身の母親にカメラを向けた3本目のドキュメンタリー映画。在日1世のヨンヒのオモニ(母)は、娘(ヨンヒ)の結婚相手のために特製のスープを作り歓迎する。また、自分の生い立ちとして済州島での事件のことを語る。それは1948年に起きた歴史的悲劇だった。そのためオモニたちは北朝鮮側についてきた。単なる家族の歴史を超えての生き方を見せてくれた。評価 ◎

「間宮兄弟」

2006年の邦画。30代になっても仲良く共同生活をしている兄弟(佐々木蔵之介と塚地武雅)の日常を描いたドラマ。ある日、兄弟がそれぞれ意中の女性を招いてホームパーティをする。その相手が皆今はビッグになっている女優(常盤貴子 北川景子 沢尻エリカ)だった。また二人の母親が中島みゆきで、戸田菜穂も出ていた。全体的に緩いコメディだが、笑いの中に得体のしれない怖さもあった。評価 〇

「ゴッドマザー」

2020年のフランス映画。犯罪ドラマだが喜劇的な作り方をしている。主人公は警察に通訳として勤務している女性。今は麻薬捜査の補助として、アラビア語の通訳を担当している。ある日、老いた母の面倒を看てもらっている介護士の息子が麻薬密売組織の一員として関わっていることを知り、彼を助けるために一芝居打つ。組織と警察を見事に騙す。痛快までは行かなかったが、気楽に見られた。 評価 〇プラス

「渇水」

昨年の邦画。水道局職員が主人公。彼は水道料金滞納世帯を廻って、それを払ってもらうように再度依頼する役と共に、協力を得られない家庭には強制的に「停水執行」を行う権限を持っている。彼の側に立つと、そうせざるを得ないと思うのだが、ある日ネグレクトしている母親と、残された子どもたちに遭遇する。それでも強制執行しなければならないのか? 社会の歪みを問っている問題作。 評価 〇

「白鍵と黒鍵の間に」

新作邦画。ジャズピアニストでエッセイストでもある南 博の回想録の映画化。昭和末期の東京・銀座を舞台に、ある曲の演奏を発端にピアニストの運命が狂いだす。その曲は「ゴッドファーザー 愛のテーマ」で、当時そこの縄張りを持っていた2組のヤクザの組長が共に好みだった。その時代とアメリカに行って戻ってきた主人公の二つの時間を交えて話が進むため、こんがらがってしまったが、それも監督の意図とのことだ。 評価 〇マイナス

「52ヘルツのクジラたち」

「本屋大賞」を獲った本の映画化。心の傷を抱えて東京から大分の港町に移り住んだ主人公の貴湖は、ある少年と出会う。長髪のやせた少年は、母から虐待され、声を出せなくなって「ムシ」と呼ばれていた。二人の生活の中でキコは、この数年の出来事を思い出しながら、共に癒しを求めていく。優しい周囲の人々にも助けられながら。題名のインパクトも、話の流れも原作通りに作ってあった。その分新たな感動は少なかったかな。 評価 〇プラス

「オオカミ狩り」

2022年韓国映画。本場韓国でもセンセーションを巻き起こした超バイオレンスアクション作品で、流れる血の量が半端ではなかった。服役中の極悪人たちを船で移送するために、かなりの警察官たちも乗船する。嵐の中を航行中、服役者たちの反乱が起こる。しかし、船の底で別に隔離・護送されていた”謎の怪人”も開放され、音に反応して無差別の殺人を始める、、、。観客はどこに身を置いてみればよいのか、わからなくなるほどのシーンの連続だった。評価  〇プラス

「コットンテール」

邦画。妻を若年性認知症(?)で失った作家の主人公をリリー・フランキーが演じている。妻の遺言「自分の遺灰をイギリスのウィンダミア湖に撒いて欲しい」を実行するために、不仲の息子一家と旅だつ。上手くコミュニケーションがとれていない親子だったが、、、。ある種のロードムービーにもなっていて、新たな一歩を踏み出す未来のあるラストに納得できた。途中、イギリスの農家の父娘との関りも良かった。題名は有名な『ピーターラビット』の兄弟の名前から。 評価 〇プラス

「バイオレンスアクション」

2022年の邦画だが、英語を用いた凄い題名だ。同名の漫画が原作。お昼は専門学校生で、夜は凄腕の殺し屋という二つの顔を持つ少女(橋本環奈)が主人公で、ヤクザ絡みのとんでもない事件に巻き込まれる。アクションは凄いが、時にコメディタッチもあって面白かった。ただ、ストーリー的にはは中途半端だったかな。 評価 〇

「アシスタント」

2019年アメリカ映画。2017年から始まった#Me Too運動を題材にした社会派ドラマ。名門大学を卒業後、憧れの映画業界に就職した女性が、ハラスメントが横行する職場に葛藤を深めていく。そして、意を決して上司に報告したが、むなしい結果になってしまった。ただこれ以降、平等を求めて時代や男女の関係が変化してきたのが事実だろう。映画としてはまだまだかな? 評価 〇マイナス

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